【感想】西井涼子編『人はみなフィールドワーカーである』
「フィールドワーク」という言葉を聞いたことがあるだろうか。聞いたことがある方はどのようなイメージを持っているだろうか。文化人類学を学んでいる人にとっては身近な言葉であるが、そうでもないとあまり普段の生活で聞く言葉ではないだろう。
文化人類学においてフィールドワークとは対象の文化を分析する前段階のデータ集めのために、実際に現地に赴き調査することを言う。とはいえ例えばアマゾンの森の奥深くに住む民族を訪れ、滞在するような調査のみをフィールドワークというのではない。私たちの日常生活にもフィールドワークできる機会は潜んでいる。
というわけで『人はみなフィールドワーカーである』を読んだので感想を記す。フィールドワークという行為が、少しでも私たちの身近なものになればいい。
続きを読む文化人類学徒が選ぶ、2018年面白かった本まとめ12選
あれよあれよという間に2018年も終わるが、みなさまいかがお過ごしだろうか。私は昨日からお休みに入り、1月7日までお休みなので企業で働きだしてから最長のお休みを堪能することになる。いいものだ。
というわけでまとまった時間もできたことだし、2018年に読んだ本をまとめていきたい。このまとめを参考に書評も今後書いていきたいと思う。
続きを読む【感想】松村圭一郎『うしろめたさの人類学』
モデルさんが政治的発言をしたら叩かれ、若者が政治的発言をしたら意識が高いと囃され…。政治的への興味が希薄な私からすればいずれの発言も「しっかり考えられててスゴイナァ」てなもんなのだが、なんでこのような発言ひとつがこれほどまで私たちの関心を煽るのだろうって思っていたんだけど、この本を読んでひとつ納得できるところがあったのでご紹介する。
続きを読むものを覚える・忘れるとはなんなのか:『殺人者の記憶法』を読んで
最近、「覚える」ということをよくする。新入社員という立場上、会社のシステムや自社製品は覚えなければならない。しかし興味が無いことは忘れる。忘れちゃいけないんだが忘れる。大学受験のときにあんなに詰め込んだ知識も今ではほぼ忘れている。因数分解とか、できるんだろうか。
といったように、覚えると忘れるは表裏一体のものである。知識という名の記憶はあればあるほどいいという世界で僕は生きているため、忘れることは悪だという価値観を少なからず持っている。でもきっと大多数の人はそうなんではないだろうか。
さて僕たちは誰もが記憶が0の瞬間がある。つまり産まれた瞬間である。今はもう二度とあの瞬間には戻れないわけだが、記憶が「無い」状態というのは一体どのような状態なのか。ふと疑問に思った。
続きを読む『万引き家族』を観て、雑感
僕は別に家族と仲が良いわけではない、と思っている。人並みに反抗もしてきたと思ってる。でも「母の日にこんなこと母にしてあげた」系のツイートを見ると、特に何もしてない自分を鑑みてちょっと罪悪感に苛まれたりもする。
さて、僕と一緒の世帯に住むもろもろの人々は、「家族」なのだろうか?
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